研究・エビデンス -3

代表研究 Mini Evidence

気分変容へのアプローチ(スクラッチアートによる情動調整の検討)

1.背景
情動の整理や気分調整が難しい場合、言語化だけで感情を扱うことは困難なことがある。
特に、頭では理解していても気持ちが追いつかない、
表現したいのに言葉にならないという状態は、臨床現場で頻繁に見られる課題である。

スクラッチアートは、線を削り出す動作と色の出現が強い視覚・触覚刺激を伴い、
没入しやすく、思考の負荷を下げ、感情に直接働きかける特性を持つ。
その体験プロセスは、思考と言語に偏りやすい状態から、
感覚的な自己調整へと移行する手がかりとなる。

2.目的
・スクラッチアートの制作過程が、気分変容にどのように寄与するか検討する
・感情表現の困難さがある場合の、非言語的アプローチの有効性を示す

3.方法
・成人の支援場面においてスクラッチアートを実施
・制作前後の気分変化を自己評価および観察で確認
・言語による振り返りを併用し、変化の意味づけを支援

4.主要結果(概要)
・集中状態への移行が早く、不安や思考過多の軽減が見られた
・制作後に、気持ちの整理がしやすくなるなどの変化が確認された
・非言語的表現が、感情を扱う導入として有効に機能した

5.臨床的意義(Recovery視点)
・思考優位から感覚優位への転換が、感情へのアクセスを促す
・気分変容が、行動への意欲回復や自己表現の基盤となる
・非言語的アプローチは、言語化が困難なケースにおいて重要な選択肢となり得る

6.まとめ
スクラッチアートは、情動調整の入口として有効な手法である。
気分変容をきっかけに自己理解と行動変容へとつなげる支援の基盤となり、
アートが実践的な臨床支援のツールとして機能する可能性を示す。

7.関連発表
Epileptic Disorders Accepted: 7 July 2023
(Utility of scratch art therapy in adult epilepsy patients with difficulties in social adaptation)
第61回日本神経学会(岡山)2020