代表研究 Mini Evidence
多様性への臨床的アプローチ(性別違和感を持つ成人への表現支援)
1.背景
性別に対する違和感を抱える人々は、
自身の感情やアイデンティティを周囲に理解されにくく、
孤立感や自己否定感を抱くことが少なくない。
言葉にすることが難しい感覚や、他者に伝えにくい内面の経験は、
支援の場面においても言語化だけでは十分に扱えないことがある。
この研究では、言語表現とアート表現を併用することで、
自己理解の深化と自己受容を支える臨床的アプローチについて検討した。
2.目的
・性別違和感に関連する感情や自己像を、安全に表現できる場を支援する
・アート表現が自己理解や自己受容のプロセスにどのように寄与するかを検討する
3.方法
・個別臨床の場面で、対話とアート表現を併用
・言語化の強制を避け、本人のペースで表現することを重視
・制作物を媒介として、感情の整理と自己像の統合を支援
4.主要結果(概要)
・アート制作を通じて、自己像に対する否定的感情が緩和し、
自分の感情を理解し言語化する過程が促進された
・他者との比較から生じる苦痛が軽減し、
自分自身を肯定的に捉える視点が生まれた
・表現過程が、対話へ進むための安全な導入として有効に機能した
5.臨床的意義(Recovery視点)
・安全な表現の場が、自己理解と自己受容の基盤となる
・言語とアートの統合的アプローチは、複雑な感情にアクセスするための支援となる
・「生き方を自分で選ぶ力」の回復が、社会参加の可能性を広げる
6.まとめ
性別違和感を持つ個人への支援において、
アート表現は自己理解の深化と自己受容の促進に重要な役割を果たす。
非言語的アプローチが、言語と併存する形で働くことで、
個々の回復プロセスを支え、心理的なリカバリーに向かう力を高める可能性を示す。
7.関連発表
第53回日本芸術療法学会(東京)2022